柳井市手話言語条例をここに公布する。 令和6年3月28日 柳井市長 井原 健太郎  柳井市条例第2号 柳井市手話言語条例 手話は、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。 言語は、物事を考え、意思疎通を図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために不可欠なものとして、人類の発展に大きく寄与してきた。 ろう者は、聴覚に障害があるため、音声による言語ではなく、手話を使って生活をしている。 手話は、ろう者にとって生きていくために必要な言語であり、「いのち」と同様に大切なものとして受け継がれ、発展してきた。 しかしながら、これまで社会的に手話が言語として認められてこなかったことや、手話を自由に使うことのできる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることも十分な意思疎通を図ることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。 こうした中で、平成18年に国際連合で採択された「障害者の権利に関する条約」や平成23年に改正された「障害者基本法」において、手話は言語として位置付けられた。このことによって、手話に対する社会的認知や理解が進みつつあるが、本市において十分に共有される状況には至っていない。 ろう者の手話により意思疎通を円滑に図る権利が尊重され、手話を使って日常生活や社会生活を安心して営むことができる地域社会を実現するためには、手話やろう者への理解を広め、手話の普及を通じて、誰もが手話を使いやすい環境を整備していく必要がある。 ここに私たちは、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に関する施策を推進することにより、ろう者を含む手話を必要とする人の自立と社会参加の促進を図るとともに、手話をかけ橋として、全ての市民がお互いを認め合い、支え合いながら、心豊かに安心して暮らすことのできる柳井市を目指し、この条例を制定する。 (目的) 第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備に関する基本理念を定め、市の責務及び市民等の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、全ての人が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1)ろう者 聴覚に障害がある者のうち、手話を使用して日常生活又は社会生活を営むものをいう。 (2)市民 市の区域内に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。 (3)事業者 市の区域内において事業活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。 (4)手話関係者 手話通訳を行う者その他の手話に関する活動を行う個人又は団体をいう。 (基本理念) 第3条 手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備は、手話が言語であること及びろう者が手話により意思疎通を円滑に図る権利を有することを踏まえ、ろう者とろう者以外の者が相互の違いを理解し、その個性と人格を互いに尊重することを基本として行われなければならない。 (市の責務) 第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境を整備するため、必要な施策を推進するものとする。 2 市は、前項の施策の推進に当たっては、内部組織の連携を図るとともに、ろう者及び手話関係者の意見を聴く機会を設け、その反映に努めるものとする。 (市民等の役割) 第5条 市民は、基本理念について理解を深め、市の施策に協力するとともに、地域において手話を使用しやすい環境の構築に努めるものとする。 2 ろう者及び手話関係者は、市との協働により手話に関する施策を推進するものとする。 3 事業者は、ろう者を含む手話を必要とする者が利用しやすいサービスの提供及び働きやすい環境の整備について、必要かつ合理的な配慮を行うよう努めるものとする。 (市の基本的施策等) 第6条 手話を使用しやすい環境を整備するための市の基本的な施策は、次のとおりとする。 (1)手話及びろう者への理解の促進に関する施策 (2)手話の普及及び啓発に関する施策 (3)手話による情報の発信及び取得に関する施策 (4)手話による意思疎通の支援に関する施策 (5)手話通訳を行う者の養成及び確保に関する施策 (6)手話の習得の機会の確保に関する施策 (7)手話による言語獲得の支援に関する施策 (8)前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策 2 市は、前項の施策の推進に当たっては、障害者のための施策に関する市の基本的な計画と整合を図るものとする。                (教育の機会を通じた理解の促進) 第7条 市は、学校等及び地域における教育の機会を通じて、手話に接する環境づくりその他の手話に親しむ取組により、手話及びろう者への理解の促進に努めるものとする。 (医療及び福祉分野における環境の整備) 第8条 市は、医療関係事業者及び福祉関係事業者と協力して、ろう者が手話を使用して医療 機関の受診及び福祉サービス等の利用ができるよう、必要な環境の整備に努めるものとする。 (災害時の対応) 第9条 市は、災害時において、ろう者に対し、情報の取得及び意思疎通の支援に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 (手話通訳の担い手の確保) 第10条 市は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第77条第1項第6号による手話通訳者を派遣し、及び設置する事業を実施するため、地域において手話通訳を担う人材の確保に関し必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 (相談支援等の実施) 第11条 市は、聴覚に障害のある子どもの乳幼児期における言語獲得を支援するため、手話に関する情報提供及び相談支援を行うよう努めるものとする。 (手話環境の提供) 第12条 市は、手話の獲得及び習得を支援するため、ろう者及び手話関係者と協力して、地域の社会資源を活用すること等により、手話を使う機会その他の手話環境を提供できる仕組みの構築に努めるものとする。 (財政上の措置) 第13条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (委任) 第14条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。 附 則 この条例は、令和6年4月1日から施行する。