本文
「きょうは豆まきをするんよ。おにがくるんよ」
1年生の顔はびみょうにひきつっています。
自分に言い聞かせるように「どうせ、おには校長先生じゃけえ」
担任の先生といっしょに多目的ホールにやってきた子どもたちは妙に腰が引けています。
ホールはなぜかカーテンが引かれ薄暗くなっています。いつもとちがう雰囲気に緊張が走ります。突然電気が消えました。
それを合図に鬼が校長室からのっそのっそとやってきました。
お約束の「キャー」という悲鳴とともに、箱に入った豆を鬼に向かって投げつけたいのですが気持ちが半分逃げています。振り向くとなぜか校長先生もいっしょに豆を投げています。
この鬼ホンモノ?
声も出さず、ただ、投げられた豆を全身に受けるだけの鬼。途中からちょっとかわいそうに思えてきます。
ときおり「いたっ」小さな声が聞こえます。
だんだんと鬼に近づいていく子どもたち。もちろん何人かは決して近づこうとはしませんが。
やっと、担任の先生の「おしまい!」の合図。「この鬼はいったいだれでしょう?」
お面を外すと公民館の館長さんでした。
「ありがとうございました」みんなで鬼にお礼?
お面を外した方がこわい・・・いえそんなことはありません。
「まさかこんな仕事がまわってくるとは・・・」伊陸公民館の館長さんは気が抜けません。