本文
文化審議会は、1月16日に開催された同審議会において、阿月の神明祭を重要無形民俗文化財に指定することについて文部科学大臣に答申され、平成21年3月11日「阿月の神明祭」が国指定重要無形文化財に指定されました。
山口県内の重要無形民俗文化財としては、周南市「三作(みつくり)神楽」、岩国市「周防祖生の柱松行事(すおうそおのはしらまつぎょうじ)」「岩国行波の神舞(いわくにゆかばのかんまい)」に続き四つ目、祭りでは初めての指定となります。
本件は、山口県柳井市阿月において伝承される行事である。本来旧暦の1月15日に行われた小正月の火祭りの行事である。災厄除けや病気除け、豊作祈願の要素とともに若者仲間からの脱退儀礼としての性格がみられる点に特色がある。
阿月の神明祭は、阿月地区を東西二つに分けて行われる災厄除けや病気除け、豊作を祈願して行われる。
朝のうちに地区の砂浜に東西に分かれてそれぞれ1本ずつ、御幣(ごへい)や橙(だいだい)などで飾り立てたシンメイと呼ばれる長い柱を立てる。シンメイを立て終わると、前年結婚し仲間を退会する若者を担ぎ、海に投げ込んで祝う儀礼が行われる。昼と夜の2回このシンメイの前でシンメイ踊りと呼ばれる女性による笠踊りや男性が新撰組や赤穂浪士の扮装をして踊る踊りと、長持ちを担いで練り歩く長持ちジョウゲなどが、行われる。夜のシンメイ踊りの終了後にはシンメイに火が点けられて焼かれ、海側にシンメイを倒される。人々は倒れたシンメイから飾りや御幣などを取り合って家に持ち帰る。また、燃えている火で餅などを焼いて食べると病気をしないなどともいわれている。
本件は中国地方の瀬戸内沿岸に伝承される同種の行事の典型例の一つであるとともに、地区の若者の若連からの脱退儀礼の場でもあった。わが国の小正月行事の変遷を知る上で重要である。(文化庁報道資料より)